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【akippaの軌跡】Vol.4 テレアポでVCから資金調達 創業4年目でたどり着いた会社経営の考え方

こんにちは、駐車場予約アプリ「akippa(あきっぱ)」広報の石川です。
この記事を開いていただきありがとうございます!

【akippaの軌跡】と題し、2009年の創業からの波乱万丈な10年間を振り返っているこの企画。何度聞いても濃厚すぎて覚えられない弊社の歴史を、入社約半年の石川が、弊社代表で創業者の金谷と取締役の松井にインタビューを行い、複数回に渡りakippaの軌跡を振り返ります。全10回完結を目指しています
Vol.4では、新規事業での苦戦、VCからの調達、そして新たな挑戦と会社経営の方針が大きく変わっていく2012年の話をまとめました。

過去記事はこちらから
Vol.1 サッカー漬けの毎日から商売の道へ
Vol.2 社員3名から20名へ。創業2年目で急拡大させた理由
Vol.3 大阪と東京、2拠点での創業初期の組織づくり

労働集約型からの脱却

当時営業会社だったギャラクシーエージェンシーは完全に労働集約型でした。人員数は20名ほどにまで拡大していたため、人を増やした分だけ売上は伸びました。しかし裏を返せば、人を増やさないと売上が伸びない状況です。このことに私はとても危機感を抱いていました。
その頃、たまたま見たテレビ番組でセコムの“収穫逓増(ていぞう)型”という言葉を知りました。収穫逓増型とは、IT企業によくあるビジネスモデルで、事業が拡大するに連れて投資効率がよくなり利益率が上がる、人員数に依存しない積み上げ型モデルです。収穫逓増型に変えないと伸び続けることは難しいと思い、松井に相談をすることになります。

金谷

“収穫逓増型”は当時元気さん(注:金谷)のブームでブログも書いてましたよね?

松井

いつかブログに書きましたね。

金谷

※そのブログがこちら
https://ameblo.jp/galaxy-ceo/entry-11715226748.html

その頃、僕も労働集約型である求人広告サイトの「アグレワーク」に対する不満が溜まっていたので、金谷に色々と意見していました。特に月末になると営業メンバーが頑張って案件を受注してくるので、後々ボロが出てクレームが出る。僕がそのクレーム処理をしていたこともあり、現場のしんどさや、市場から求められているものが何なのか、一番わかっていた立場なのかもしれません。 そこで新規事業として考えていたのが成果報酬型の求人サイトです。当時、他社でも成果報酬型の人気が高まっていたこともあり、金谷に新規事業としてできないか、と話していました。

松井

ちょうど”収穫逓増型”のサービスを考えたいところでしたからタイミングが良かったです。成果報酬型の求人サイトだと、営業が掲載店舗を獲得することで売上が発生するわけではなく、掲載店舗でアルバイト採用が決まって初めて売上が発生する。つまり私たちが休んでいる間でも売上が発生する理想的なカタチです。2012年4月に成果報酬型求人サイト「リバイト」をリリースすることになりました。

金谷

これまでは営業会社と言っていましたが、「リバイト」を出す頃からインターネット会社と名乗るようになりました。

松井

石川

新規事業となるとまた人が必要となりますが、どのような体制で作られたのですか?

新規事業の立ち上げには発案者でもある松井が必要だと考え、東京を佐藤に任せて松井を大阪に戻しました。アグレワークを当時営業部長だった加戸(現:galaxy株式会社 代表取締役社長)に任せ、松井をリバイトのプロデューサーにしました。同時に二人には取締役に就任してもらい、それぞれの事業に対する責任をより深く負ってもらいました。

金谷

初期投資が必要な、積み上げ型の事業

石川

事業は順調にスタートできたのでしょうか?

リバイト」は成果報酬型なので採用が決まらなければ弊社は売上がゼロです。採用には時間がかかるため、売上が立つには時間がかかりました。

松井

半年経っても売上が上がらないことに対し、強く言ってしまいました。これはまさしく朝倉さんの書籍でいう“PL脳”(※)で、それまで営業代理店だったこともあり「リバイト」に対しても初期から売上を求めすぎてしまいました。キャッシュ的な余裕もなかったんです。これは大きな間違いでしたね。これを教訓に“ファイナンス思考”になりました。

金谷

※PL脳とは、元mixi朝倉祐介氏が著書『ファイナンス思考』で提唱する、売上や利益の前年比との増減に一喜一憂する考え方。

石川

それでも「リバイト」を継続するという判断をされたかと思いますが、その理由と運転資金はどうされたのですか?

目先だけでなく将来を考えると、積み上げ型の「リバイト」への投資は必要だと考えていたので事業は継続する判断をしました。しかし、資金面はこのままではまずい、ということでキャッシュを意識したイベントの企画を始めました。

金谷

石川

どのようなイベントを企画されたのでしょうか?

アイドルのLIVEイベントです(笑)

金谷

なんばHatch大阪なんばにあるライブホール)でやった「LIVE ALIVE」ですよね?なんで突然ライブやりだしたのか今までずっと疑問でした。

松井

「LIVE ALIVE 2012夏 アイドル&メイド 音楽祭」の実際のチケット
3,000円の前売券200-300枚を販売した。

確実にチケットが売れることがわかっていたので「リバイト」の運転資金を稼ぐための施策として開催を決定しました。「サッカーなう」チームが企画したのですが、アイドルがチケットを買ってくれて、そのアイドルがファンに売るシステムなので、そこそこ固いなと思いました。

金谷

そういえば当時、「サッカーなう」チームが手売りもしてましたね(笑)。運転資金稼ぎのためのイベントとは知りませんでした。

松井

得意のテレアポ・営業力で掴んだVCからの資金調達

同時に私は本屋さんに行って「資金繰りに困った時に読む本」を手に取りました。そこでベンチャーキャピタル(VC)の存在を知ります。
とにかく切羽詰まっていましたし、VCは会社の将来性に投資をしてくれると書いてあったので、「VC 日本」とネットで調べて上から順にVCに電話をかけていきました。「未公開株買ってください」といって突然電話をかけていたのですが「詐欺と間違われるから言い方を直した方が良いですよ」と言って電話の掛け方を教えてくれる方もいました。PDCAをまわしながらトークスクリプトをブラッシュアップしてテレアポを続けていったものの、当時2012年はリーマンショックの影響が続きベンチャー投資が冷え込んでいて苦戦しました。今考えると1999年〜2018年の20年で最もベンチャー投資が少なかったのがこの2012年なんですよね。でもなんとか、3社だけ会っていただけることになりました。
実際に最初の2社のベンチャーキャピタリストの方に会うと、ほとんど興味は持っていただけなかった。でも3社目の方はどこか違いました。「金谷さんは何か凄いことをやりそうですね」って言われたんですよ。でもその3社目は最大手のVCだったこともあり、そんなに甘くはないだろうなと思ってました。
そこから何度も何度も会いに来てくれて、事業計画の作り方まで教えてくれました。そして結果的にこの最大手のVCから、6,500万円の出資をしていただけることになりました。ずっと続いていた暗闇に明るい光が差し込みました。

金谷

全ては金谷の営業力ですね。

松井

もうその方々に感謝しかないですね。ここで調達できたことによって少し持ち直しました。そして私の時間に余裕ができたことで、新しいことに取り組み始ることができました。そこで2013年1月から始めたのが出版事業です。第一号社員だった地元の同級生である小畑と、アルバイトの3名、そして代理店さんを採用して始めました。これはヨミが当たり、初期から好調に売上は上がり、キャッシュが回り出します。
ただ資金調達したとはいえ、まだキャッシュに大きな余裕があるわけではなかったので「アグレワーク」の営業もストレッチをかけて頑張ってもらいました。事業は複数ありましたが、売上のメインは求人広告サイト「アグレワーク」だったので、特にアグレ事業部へのプレッシャーは強かったですね。その結果、歪みが出てしまいクレームが増えていきました。

金谷

石川

どういったクレームが多かったのでしょう?

求人を掲載していても求職者がこない、といったクレームです。一方「リバイト」は成果報酬で、採用が決まって初めて費用が発生する形なのでそう言ったクレームはありませんでしたが、時間がかかるビジネスでした。有名企業との契約が決まるようになってから、サイトもリッチになり徐々に売上が経つようになりましたが、1年ほどはかかりましたね。

松井

でも、キャッシュの少しの余裕と、クレームという大きな課題が合わさったことが、会社を大きく突き動かすことになります。

金谷

苦労や失敗からたどり着いた、”労働集約型”から”収穫逓増型””PL脳”から”ファイナンス思考”といった考え方。会社経営に対する金谷の考え方の変化が一番多かった一年だと、今振り返ると思います。いずれも現在のakippaに根付いている考え方で、akippaの基盤はこの頃にできたのかもしれません。

つづく。

■連載記事一覧
Vol.1 サッカー漬けの毎日から商売の道へ
Vol.2 社員3名から20名へ。創業2年目で急拡大させた理由
Vol.3 大阪と東京、2拠点での創業初期の組織づくり
Vol.4 テレアポでVCから資金調達 創業4年目でたどり着いた会社経営の考え方
Vol.5 “なくてはならぬ”をつくる
Vol.6 “ITの初心者たち”が作り始めたシェアサービス
Vol.7 “IT企業”への転身
Vol.8 事業の成長、組織の拡大
Vol.9 波乱万丈からの脱却
Vol.10(最終回) akippaのいま 

金谷 元気

代表取締役社長 CEO

1984年、大阪府生まれ。高校卒業後はJリーガーをめざし関西リーグなどでプレー。引退後から2年間は上場企業で営業を経験し、2009年2月に24歳で創業。2011年、株式会社へ組織変更し代表取締役に就任。

松井 建吾

取締役 CZO

1986年生まれ。大手通信キャリアの業務委託企業にて営業を経験し、2010年4月にakippaへ入社。2012年より取締役となり、akippa事業の新規創出や、各事業チーム・HRの立ち上げを歴任。現在はChief ZeroIchi Officerとして新規事業の立ち上げを担う。 事業・チーム・支社など何でも立上げる事を行う「ゼロイチ屋」。趣味は妄想。メタの上のメタを考えて大体いつも頭がぐるぐるになっている。

石川 絢子

広報

慶應義塾大学卒業後、インターネット広告代理店、グリーを経て2018年4月にakippaへ入社。グリー時代は新規事業立ち上げや管理系業務、広報など幅広く担当したが、現在akippaでは広報マネージャーを担当。
趣味は旅行で年間3回海外に行くことを目標にしている。